アドマケファクトリー

ビジネスマンに役立つ知識やノウハウを共有。広告、マーケティング、ビジネススタイルを学べるビジネス情報メディア。

揺れる採用現場、リクナビの内定辞退率販売は是正勧告に。

 

リクナビ内定辞退率の販売はついに是正勧告へ

リクナビが内定辞退率の販売(サービス名:リクナビDMPフォロー)を行っていた件に関して、もともと是正勧告を検討とニュースが流れてはいたが、ついに8月26日個人情報保護委員会リクルートキャリアに是正勧告を出す方針を固めたと発表した。これは、個人情報保護委員会としても初の事だそうです。学生の同意を得ずに個人情報を提供した事が正式に法令違反にあたるという見解を示された事になります。

これまではグレーラインとも捉える事が出来た本件、今回この是正勧告を受けて個人情報保護法の違反という事で決着しそうです。今後リクナビは是正勧告に従い改善を行わなければなりません。(サービスは廃止されているので、社内での社員教育や制度などを主に変えることになりそうです)

f:id:adomake:20190810231948j:plain

 

リクルートが内定辞退率を提供 それを買った企業達

そもそもの事の発端は、リクルートキャリアが自身の運営するサービスのリクナビに登録している就活生の内定辞退率を企業に400万から500万程度で約40社に提供していた事がメディアに出た事に始まる。リクナビといえば良くも悪くも圧倒的なブランド力を持っていたので、就活生ならびに世間からは大きなバッシングを受けた。

また、続報として自動車メーカーのホンダが自社で購入していた事を発表。ただし「合否に影響を及ぼす使いかたはしていない」と弁明している。

(8/26追記)その後購入した企業が続々公表  購入企業(一部)

ホンダ、トヨタ自動車、京セラ、三菱電機NTTコムウェアYKKレオパレス、りそなHD、アフラック大和総研HD

など20社が公表している(各種報道より)という事で、残り約20社が発表するかが気になるとことです。

 

 

今回、リクナビの内定辞退予測問題の裏で何が起きていたのか

リクルートが辞退率を予測した仕組み

リクルートが発表した内容によると、提供企業の昨年の内定辞退者のリストを受領し、その辞退者がどんなサイトをどの程度閲覧していたかをAIが分析して今年の学生にそのロジックを当てはめ辞退率を五段階で出しているというもの。

法的な問題点

本件の法的な問題点は、提供したリクルートキャリア社と、提供を受けた企業側の両方に発生してくる。

リクルートキャリア側の問題

こちらは言うまでもなく個人情報保護法である。外部に個人情報提供する際は本人の同意を得なければならない。報道当初はこのパーミッションが無かったかの様な報道も見受けられたがリクルートキャリアは問題発生の後に「行動履歴を分析し、採用活動補助のために企業へ提供する」と同意を取っていたとリリースで反論。その後、4日後に再度リリースを出し見直した結果不備があったと認めた。この対応の情けなさも今回とても目に余るところがある。

また、今回リクナビに違反があれば調査すると東京労働局が発表をした。

 

購入した企業側の問題

こちらも、職業安定法が第三者からの個人情報の購入をして採用に反映させる事を原則禁止しているので、その適切な運用に違反した可能性がある。また、購入した企業には法的な問題点以上に問題があると思うがそれは後述する。

 

リクルートキャリア社の不可解な行動

私がまず感じたのは、倫理的な問題点である。使い方や法的な問題は置いておいて、そもそもになぜ内定辞退率の予測なんて商品が許されると思ったのか。リクルート社ともあろう企業がそのこの倫理面の問題点を度外視した事が俄かには信じられない。新卒市場は学生減でシュリンクしていくとは思うが500万で40社に売っても2億だ。1400億の取り扱いを持つリクルートキャリアがこの2億の為にこんなリスクを取るだろうか?私は一部門の暴走と思っていたが、一部報道によるとこの内定辞退率の予測サービス(リクナビDMPフォロー)が一大プロジェクトだったかのようにされており疑惑は深まるばかりだ。

 

AIやビックデータへの焦り

1つの仮説として、今回の件はAIやビックデータへの焦りから生まれたのではないか。リクルートというのは元来人が必ず通るライフステージで圧倒的な顧客囲い込みにより、ライフイベント関連企業からリクルート税とも呼ばれる費用を取得する事で大きくなってきた。

しかし、AIやビックデータ系のテック企業が台頭してくると、プラットホームさえあれば企業と学生のマッチングに関しては間にリクルートが介在する価値がなくなる可能性が高い。今回の騒動は既に蓄積されてきたデータを持つ強みをアピールする目的としてDMP販売に繋がったのではないのか。転職市場の伸びとindeedなど買収企業の業績好調を受けながらも新卒領域では焦りがあったのかもしれない。

 

購入した企業への提言

今回購入をした側の企業は、なぜ購入をしたのだろうか。今回ホンダは合否判断には利用していないと言っているが内定辞退率を合否判断に利用せず500万も払ったのか?言い分通りフォローを手厚くするにせよ、何かの判断基準にしたのであればもうこれはパーミッションを取っていない情報を元に勝手に差別した事になりアウトと言わざるを得ない。

リリースを見る限り、リクルートは内定の辞退率がここ数年で劇的に上がっており、企業と就活生双方にとってこれは不利益な事だと言っており、この商品をセールスしていた時もそのようにアピールしてたかもしれないが、辞退率の低下は最近の売り手市場と日本企業の魅力低下によるものでしかないでしょう。

この事象は新卒一括採用で、まだ旧来の大企業に一応就活生はエントリーするが、企業が欲しいと思い内定を出す人材ほど外資ベンチャーに流れているというだけではないないだろうか。

今回購入した企業はどうするべきか

今回購入が発覚した企業は素直にリリースを出すべきだ。恐らくこの炎上はそのうち収まるだろう。ただし、これが万が一世の中に意図しない形で出た場合、社会的インパクトは少ないかもしれないが採用された社員はその企業に残り続けるわけで、その社員が私は安パイと思われた、欲しかったわけではなく可能性が高かっただけだなんて思い始めたら企業の経済活動にも打撃を与える。早めに情報開示し、受け入れられるかは別として弁明するなり姿勢を示すべきだろう。

 

これからの企業の採用について

この DMP騒動で疑問に思うのは内定辞退率を見た結果欲しい人材が全員高い内定辞退率だったら諦めるのか?という話だ。採用とはそういうものなのだろうか。欲しい人材に入ってもらうにはどうするべきかを考えるべきではないか。

もし、あなたの会社が欲しい人材を囲い込むだけのビジョン、給料、ポジション(職種)を用意できないのならばやるべきなのはリクルートのDMPを買う事ではなく、それらが改善するように事業と社内制度を見直す事だろう。

 

今回の件は単にリクルートの、やっちゃった話だけに留めるのではなく日本企業のAIやビックデータや個人情報の対応への遅れ、日本企業の採用力の低下など、日本の抱える課題が噴出したと捉えて、早急に立て直す必要があるのではないだろうか。

 

※この記事は速報的に8/9に公開した記事を8/26に加筆修正を加えたものである

 

 <こちらの記事もおすすめ>

adomake.hatenablog.com

adomake.hatenablog.com

adomake.hatenablog.com