サードプレイスとは?OMO時代に場所で人の心を動かすマーケティング戦略
サードプレイスってご存知ですか?
この言葉自体のトレンドとしては少し古くなってきているのですが、OMO時代にデジタルとリアルが溶け合い私たちの周りに溢れる情報は爆発的に増えるはずです。ある意味では便利になりますが、人間の処理できる情報なんてのは大昔にキャパシティを超えているわけで、これからのさらなる情報洪水は間違いなく私たちにストレスを与える事でしょう。
そんな中、再び私はこのサードプレイスが重要な役割をもつタイミングが改めて来たと思っています。
サードプレイスとは
サード・プレイスとは、コミュニティにおいて、ファーストプレイスである自宅、そしてセカンドプレイスである学校や職場とは隔離された、心地のよい第3の居場所を指します。サード・プレイスとしてよく扱われるのがカフェ、公園、などである。また、サードプレイスは下記の特徴を持っているとされている。
- 無料あるいは安い
- 食事や飲料が提供されている
- アクセスがしやすい、歩いていけるような場所
- 習慣的に集まってくる
- フレンドリーで心地良い
- 古い友人も新しい友人も見つかるようなところ
何故いまサードプレイスが必要か
時代遅れと言われるかもしれないが、個人的にこれからサードプレイスの需要は日本では増えていくと考えている。なぜ、このタイミングで消費され尽くしたこの言葉を私が持ち出したのか。需要が増えると思う理由は下記の2点である。
自分が自分になれる場所の為に必要になる
冒頭でも書いたが、現代人は多くの情報に晒され続けている。世の中で何かあるとスマートフォンからは逐一ポップアップがあがり、ツイッターやフェイスブックは誰がどこで何をしているのか常に更新される。そして、電車やタクシーなど移動している時ですら、ビジョンでの広告があなたに語りかける。
さらに、電話がメールに、そしてスラックスやチームスなどのチャットツールに切り替わった事により処理するセッション数はもの凄く多くなっている。そんな情報洪水の中で、人間はその情報処理するだけで精一杯になっているのではないだろうか。特に、今のマネジメント層は自分の時に無かったそういうツールへの対応に、そして早い時代の変化にただただ追われて続けているように感じる。
そうなると、本来優秀な人材も能力を発揮しづらくなっているのではないか。その人たちが、ファースト、セカンドプレイスから入る情報や人間関係を一度絶って自分と向き合うことでもう一度本来の能力を取り戻せると考えている。
キャリア形成の為に必要になる
もう1つの理由が、キャリア形成の為だ。日本企業は経団連が終身雇用の維持に対して難しいという見解を見せたりと、今まで1社に一生奉公して上に上がるスタイルは現実難しくなってきたと思う。その時に、ファーストプレイスとセカンドプレイスしか行き来してこなかった人間はとたんにファーストプレイスを奪われ行き場をなくす。
何も、これはサードプレイスで副業をしなさいという話ではない。ファーストプレイスとセカンドプレイスの間でしか形成されない、知見、能力、人脈だけでは専門化しすぎてしまい他で培ってきたものを発揮できずに危険だという事です。サードプレイスでは人脈を築くのもよし、資格勉強などをするのもよし、組織から切り離した自分を高める為の場として活躍してください。
以上の理由から、日本ではサードプレイスを好む消費者が増えてくるのでは無いかと考えている。
OMO時代の企業のサードプレイス戦略
一方、OMO時代に企業のマーケティング戦略としてのサードプレイスはどう変化していくのだろうか。消費者に取ってのサードプレイスを作りそこに呼び込むことももちろん必要であるが、直接の販路(ファーストプレイス)、そしてデジタル接点(セカンドプレイス)とは別の第三の場(サードプレイス)を取り入れる事が重要になってくる。OMOに関する詳しい説明は下記の記事を参照ください。
スターバックス
スターバックスは「人々の心を豊かで活力あるものにするために—ひとりのお客様、1杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」というミッションを掲げ、お客様のサードプレイスとしてより豊かで潤いのある時間を提供し、最高のスターバックス体験をお届けすると言っている。
もともと、サードプレイスを提供してきたスターバックスに今何が起きているのか、中国を中心に爆発的に配達需要が増え中国ではアリババと提携して、日本でもUber Eeatsと積極的に提携をして配達事業を進めている。スターバックスはどこへ行っても同じ体験が出来る、机のスペース一つとってもコーヒーを最高の空間で体験する事が出来る為に統一されているのだ。そんな「場」を大事にしてきたスターバックスが今OMOの流れの中で「場」ではない配達事業への注力を余儀なくされている。
スターバックスは場とセットで成長してきたブランドである。今でこそ、そのブランドをアリババやUberで注文しているという構図であろうが、数年経って「場の体験 」をしたことの無い世代がスターバックスに対してどんなブランドイメージを抱くのか。私はこのまま行くと大幅なブランド力の低下を起こしかねないと思っている。短期的な業績の話をすると配達領域への進出というのは販売戸数が伸び回転数に縛られない提供を出来るので市場は爆発的に広がるだろうが、その領域でスターバックスは競合他社に勝てるのだろうか。
もちろん、そんな事はスターバックスは百も承知だろう。彼らはSTARBUCKS RESERVE®というコーヒー体験をより強めた店舗を作るなどきちんとサードプレイスの力を発揮し体験の価値を高めようとしている。
日清食品
彼らはデジタル接点(ECなど)が増える事により売り場や広告においてのブランド訴求が弱まるのを感じているのだろう。売り場での接点や広告接点で強烈な体験価値を作れるように常に、パッケージや広告のアイディアには奇抜さを取り入れている。さらに、カップヌードルミュージアムの様に商品の体験価値を最大化する場を作っており、これがサードプレイス的に働いている。
日本橋高島屋S.C.
高島屋といえばデパートとして格式に重きを置いてきた。そんな高島屋が2018年に家と職場に次ぐ居心地の良い“サードプレイス”を提供というコンセプトでオープン。実態はテナントありきとなってしまうのでなかなか難しかったのかもしれないが、カフェやヨガのテナントなどで若者がサードプレイスと感じて来店をしてくれる事を狙って作られた。この取組においては、このコンセプトが狙っていた若者にどの様に受け入れられたか後数年見守る必要があるだろう。
これから来ると思うサードプレイス
さて、サードプレイスが消費者に求められる理由と企業の取り組みを書いてきたが、個人的に私がこれから成長すると思い見守っているサードプレイスを紹介する。
コワーキングスペースやシェアオフィス
コワーキングスペースってセカンドプレイスでは!?と思われるかもしれませんが、特にサラリーマンこそ、自分のキャリアを成長させるための場としてコワーキングスペースやシェアオフィスの活用は今後進んでくると思います。
終身雇用が崩れ個人の能力にフォーカスがあたる、AIが仕事の大部分をやってくれて労働から開放されるなど色々な面から1つの会社・1つのオフィスの時代は終わりを迎えると思っています。その時に、メインのワークプレイスと別の場としてサードプレイスは重要性を増すと思います。
1人で泊まれる旅館
文豪が昔お籠りをしていた旅館などはありますが、ビジネスマン向けに提供される旅館というのはまだ少ない状態です。年末年始に自分の目標を作る、昇進や転職のタイミングで自分と向き合う、夫婦で年に1日1人になる時間を作るなど、これからこの1人で集中する時間の重要性は増すと考えてます。その時に、温泉に入って、川のせせらぎを聞き、美味しい料理を食べる。それが感性を刺激する貴重な場になると思います。
なぜその様な場がないか、それは旅館側のサービス効率が悪くなるからそもそも1名で提供したくないという理由もあると思います。(泊まれてもとても高くなるところが多いです)需要はとても多いというわけではないですが、プランの提供から始めている旅館もありこれから増えるニーズの一つだと思っています。
いかがでしたでしょうか、あなたのサードプレイスを見つけに行ってみませんか?
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